春になったら君に会いたい
「ね、とにかく苺でしょ?」
「お、おう」
「ほらやっぱり! 私の語彙力が低下したわけじゃないもん」
のぞみは誇らしげにそう言っているが、その意味すら理解できない程度に俺の頭はやられていた。
今、絶対顔が赤い。思った以上に、あーんと間接キスが恥ずかしかったのだ。というより、嬉しかったと言うべきか。
心臓が高鳴りすぎて痛いくらいになっている。当の本人は気づいてすらいなそうなのに。
「ねぇ、冬くん」
名前を呼ばれただけで、さらに心臓が活発になる。このままでは死んでしまいそうだ。
気持ちを落ち着けるため、一度深呼吸をする。
落ち着け、俺。
そう頭の中で言ってから、返事をした。
「なに?」
「私もチョコアイス食べてみたいな。一口もらってもいいかな?」
だから、上目遣いで首かしげるのはずるいって!
心の中で叫んでしまう。流石に声に出したら引かれそうだ。とはいえ、ぐっとズボンを握りしめてしまったのは致し方ないだろう。
「……いいよ、やる」
妙な間を開けて俺が答えると、のぞみは嬉しそうに笑った。そして、口を開ける。
つまり、俺に食べさせろと言っているのだ。
それはそれで恥ずかしい。
しかし、さっきしてもらった以上退けなくなり、俺は一口分のアイスを掬って、のぞみの口に入れた。
「うわぁ、こっちも美味しい!」
無邪気にはしゃぐ彼女。
それを見て、俺がいっそう顔を赤くしたのは言うまでもないだろう。