【完】俺が幸せにしてやるよ
「陽葵先輩にこういうのを言うのはあれなんですけど⋯⋯親に会っていただけませんか?」
会う?
「⋯⋯あなたの親に会って、何のためになるの?」
私は捨てられてる。
私は関係ないと思う。
そういう意味を込めて、私の親とは言わず、あなたの親と言った。
今まで1度も出したことなかった感情だけれど、本当は、親が憎い。
今までどれだけ苦労したと思ってるの⋯⋯?
私のことを産んだ人はその事を知ってる?
「ちゃんと理由があったんです。施設に預けたのは」
「言い訳なんて⋯⋯」
そんなの通用しない。
「言い訳に聞こえるかもですけど⋯⋯」
親の話が出てきた途端こんなに性格悪くなる。
私の中から出てきそうな悪魔を食い止めて、人当たりのいい顔を貼り付ける。
「ごめんね。香織ちゃん。ちょっとお返事は後でもいい?」
今のままずっとここで香織ちゃんと一緒にいるのはダメだ。
「はい。急にこんなこと言ってすみませんでした。では失礼します」
そう言ってお金を置いて帰って言った。
あの子が私の妹⋯⋯。
妹がいるなんて全然知らなかった。
信じられないけれど、本当のことなんだろう。
施設のことも知ってたし、名前と誕生日だけは紙に書かれてあったから、多分、名前も一致したんだろう。
憂鬱な気分になりながら家に帰った。