HEROに花束を(完)
ちゃんと言わないと伝わらない。
悠からそう教えてもらったばかりなのに…わたしときたら…
「あっ…。」
慌てて立ち上がった拍子に雑巾がけのバケツが倒れて、水がバシャっと広がる。
ドジだなあ…
小さくため息をついてしゃがみこむ。
ふと時計に目をやれば、いつの間にか30分が経っていた。
みんなで協力していれば、もう終わっていたのになあ…
なんて、今更悔やんでもしょうがない。発言しなかったのはわたしだし、大丈夫って言ったのもわたし。
誰かが言っていた。
声を出さないものは賛成とみなされるって。
本当に、世の中そういうものなんだなあ…って、ちょっとだけ悲しくなったりもする。
悠だったらどうしてたんだろう。
みんなでやろうぜ!って笑顔で言ってたのかな。
水を含んだ雑巾をしぼりながら、しばしの間ぼんやりとする。
何してんだろう、って。どうして止めれないんだろうって。今の状況というよりも、自分の弱さに落胆する。
やっぱりわたしはまだ、殻に閉じこもったままなんだ。