HEROに花束を(完)
「…手伝ってくれてありがとね。」
そう言ってしゃがみこんで悠の顔を覗き込むと、少しだけ目を見開いた悠が、くしゃっと笑った。
「バーカ。当たり前だろ?ダチだし。」
「…っ、うん!」
コクっと頷けば、よしよし、なんてからかわれる。
「お前って、マジでいいやつだよな。」
「嘘だ。悠の方がずっと良い人。」
「ハハっ、んだそれ。」
たまに悠が向ける優しい眼差しとか、クスって笑うその仕草が胸をあったかくする。
雑巾がけをするときにふざけたようにダアーっと教室を走るところとか、そのあとに、『お前もしよーぜ!』って、ニヤっと悪童っぽく笑うところとか。
たまたま腕が触れちゃって、わりい、っていうところとか。
近いけど遠いその距離。
日焼けした笑顔が眩しい。
たまに香るお日様の匂いがくすぐったくて。
どこか、青春の味がした。