HEROに花束を(完)

「…手伝ってくれてありがとね。」


そう言ってしゃがみこんで悠の顔を覗き込むと、少しだけ目を見開いた悠が、くしゃっと笑った。


「バーカ。当たり前だろ?ダチだし。」

「…っ、うん!」


コクっと頷けば、よしよし、なんてからかわれる。


「お前って、マジでいいやつだよな。」

「嘘だ。悠の方がずっと良い人。」

「ハハっ、んだそれ。」


たまに悠が向ける優しい眼差しとか、クスって笑うその仕草が胸をあったかくする。

雑巾がけをするときにふざけたようにダアーっと教室を走るところとか、そのあとに、『お前もしよーぜ!』って、ニヤっと悪童っぽく笑うところとか。


たまたま腕が触れちゃって、わりい、っていうところとか。


近いけど遠いその距離。


日焼けした笑顔が眩しい。


たまに香るお日様の匂いがくすぐったくて。



どこか、青春の味がした。



< 107 / 537 >

この作品をシェア

pagetop