HEROに花束を(完)
そっと机の引き出しを開けると、もう長いこと開いていなかったノートが眠っていた。
悠が来てから、このノートを開けることが少なくなった。
パラパラとページをめくると、空白のページになる前の最後の絵は、
一人の男の子が、大きな桜の木の根元に立って微笑んでいる姿だった。
わたしはそのノートをそっと抱きしめると、壁に貼ってあるカレンダーの今日の日にちを塗りつぶした。
『父の日』
その言葉も、見たくなかった。