HEROに花束を(完)
わたしはその二人から逃げるように背を向けると、そのまま大通りを歩いた。
緑の葉が宙を舞って落ちてくる。
また来年、きっとこの木々は桃色のベールを纏うんんだ。
ーひらり、ひらり
一枚の葉が鼻先をかすめて飛んで行く。
そんな時、わたしは桜の葉を目で追うように前を向いた。
この時、前を向かなければよかったのかもしれない。
桜の葉を追わなければよかったのかもしれない。
そしたら、また違った道を歩んでいたのかもしれない。
膿んだ傷を引き裂かなくても、済んだのかもしれない。