HEROに花束を(完)
ひらりひらりと舞う葉の先に
日差しが熱い。
青い葉が滲み始める。
頭にピリッと電流が走って、めまいがする。
何が何だかわからなくなって、心臓がうるさくて何も聞こえなくて。
それでも、世界が桜の葉の青でいっぱいになってクラクラしても、
あの人の笑顔だけは鮮明に見えるんだ。
わたしに向けられていない、その笑顔だけは。
体が傾きそうになって、木の幹に体重を預ける。
次第に息が苦しくなってくる。
そして、あの人のやわらかい表情しか見えなくなった時、
まるで波が押し寄せてくるように、
封印していた記憶が溢れ出してきたんだ。
いやだ、いやだ、見たくない…っ!