HEROに花束を(完)
桜の花々の甘い香りにとともに、安心するお団子の匂いが漂ってくる。
桜に隠れて見えないけれど、
我が家はこの辺りでは有名な駄菓子屋さん。
自転車を桜の木に立てかけると、わたしはガラッと引き戸を開ける。
「ただいま。」
「おかえり、ほのちゃん。」
ばあちゃんの優しい声がカウンターの下から聞こえてくる。
よっこらせと頭をのぞかせたばあちゃんの髪は、日に日に目に見えるくらい白くなっている。
わたしはカウンターの裏にある調理部屋にも顔をのぞかせる。
「おかえりー。」
お母さんが忙しそうに小麦を混ぜながら顔を上げる。
「学校どうだった?」