HEROに花束を(完)
わたしは泣きながら携帯の画面を開く。
『結城悠』
本日二度目に見たその名前。
「わたしにはっ…悠しかいないよ…っ…」
家族からの明らかな気遣い。
血の繋がった人の一人もいない家庭。
置いて行かれたわたし。
みんなから、裏切られたわたし。
あの人からも、あの子からも…
「悠…っ助けて…っ。」
ヒュっと息を吸ってその名を呼ぶ。
手が震えて通話ボタンが押せない。
「っ…ゆっ…う…っ。」
わたしには、悠しかいないんだよ。
悠じゃないとダメなんだ。