HEROに花束を(完)

ー入学五日目。


今日もまた、わたしは休み時間の間、一人で校庭の芝生の丘にいた。

桜の花が舞い散る中、一人でお弁当を食べていた。ー




「楽しかったよ。」




別に、楽しくなかったわけじゃない。


前の学校よりはずうっと楽しい。


一人で物思いにふけることができるし、校庭の坂は案外居心地がいいものだった。


たまに鳥が舞い降りてきたりして、お弁当のふりかけを少しだけ分けてあげたりした。


それに桜が見えるっていうのは、結構わたしは嬉しくて、ずっと桜のベールに囲まれることができて、案外幸せだ。


それに、前の学校と違って誰からも干渉されない…し。



いや……それは、嘘かもしれない…。



ただ一人、変わった人がいるんだ。



その人は、今日も朝、挨拶をしてくれた。


わたしが教室に足を踏み入れたら、みんなの輪の中にいた彼は、一番に手を上げて名前を呼んでくれた。


周りが少し驚いていたのも覚えている。


ちゃんと返せていたか、わからない。


緊張してうまく声が出なかった。

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