HEROに花束を(完)
うっすらと目を開けると、誰かの肩が見えた。
「っ…悠?」
日向の香りを胸いっぱいすこんで聞けば、ガバッと離れてわたしの顔を心配そうに見つめてくる彼がいた。
瞳をきゅっと細めて、ちょっとだけ怒ったみたいにわたしの名を呼ぶ。
「っ…穂花!」
そう言ってまた強く抱きしめられる。筋肉質で日焼けした、頼もしい腕が自分に回っているのを感じて、初めて、誰かに守られている気がした。
どうして……。
今までずっと、ずっと一人で頑張って自分を守ってきたのに…どうして…こんなにも簡単にわたしの中に入り込んできて…側にいてくれて…
あったかい気持ちにしてくれるの…?
「お前、なにがあったんだよ…?」
そう耳元でつぶやかれて、わたしはあの人の過ぎ去った背中を思い出した。
「っ…ぅうう。」
思わず泣き声が漏れてしまうと、悠の肩がびくんと跳ねる。
「っ…お前をこんなにまでした奴誰だよっ!!」
わたしの背中に回る腕が震える。
柄になく怒声を出す悠。
初めて聞く悠の低く掠れたそんな声。