HEROに花束を(完)
ーわたしのために怒ってくれてるの?
「…っ…悠…っ…悠しかいないのっ…」
震える声で嗚咽を止めながら言うと、悠の体がまた震える。
涙がどんどんと悠の服にシミを作る。
それでもわたしは離れられない。
心細くなって悠の背中にそっと腕を回して服を掴む。
行かないで…っ
悠から手を離すことなんできない。
悠だけには、そばにいて欲しかったから。
「穂花…。っ…」
なんども優しく背をさすってくれる悠が、今日ばかりは王子様に見えて。
「悠…悠っ…っう…ゆ…ううう〜…っ」
人前で泣いたのは、これが三回目だ。
一回目はあの桜が咲き乱れた嵐の日、あの人の前。
二回目は悠に八つ当たりをした日。
わたし、悠がいると涙腺が脆いな…
安心しちゃうから、かな。