HEROに花束を(完)
悠の体は程よく筋肉が付いていて、男らしい。
悠ならわたしを守ってくれるの…?
悠は周りの人の目を気にせずに、そっとわたしを離すと、目をまっすぐに見て聞いてきた。
「何があったんだよ。」
涙が頬を伝ってこぼれ落ちる。
悠はそんなわたしに顔を歪める。
まるで自分のことかのように泣きそうになる彼は、本当に優しい人だ。
「お…っと…さんが、いたっ。」
涙を飲み込んで言葉を押し出す。
「おと…っさん、が、いたっ…っぅう。」
「お父さん…?」
浅く息を吸う。
「わたしを…っ、置いてっ…た、お父さん、が、いたの。」
悠はわずかに目を見開く。
真夏の太陽がじりじりと照りつけてくる。
「別の場所に、移動しようか。」
悠はそう言って立ち上がる。
だけどわたしは…足に力が入らなくて、立ち上がれない。