HEROに花束を(完)
いつの間にか人気の少ない大きな道路に差し掛かっていた。
雲ひとつない青い空がわたし達を包み込むように広がっている。
鼻をくすぐるのは磯の香り。
悠の背中から顔を出せば、道路脇の白いフェンスの先に、青海原がどこまでもどこまでも続いていた。
海の風は優しくわたし達を撫でてはどこか知らない場所へ吹き去ってゆく。
悠のぬくもりを感じながら、わたしはただ波打ち際に打ち寄せては離れて行く波を見つめていた。
荒れ狂う時もあれば穏やかな時もある海の波。
それでも、いつだって変わらず大きく包みこむような存在。
まるで悠みたいだ。
そんな思いがぽつんと浮かんだ。