HEROに花束を(完)
*
ー 小学一年生。春。
「これから穂花はここで暮らすんだよ。」
大好きなお父さんに手を引かれて連れてこられたのは、古い駄菓子屋さん。
「よろしくね。」
わたしの目線に合わせてしゃがんで話しかけてくれたのは、お父さんが教えてくれた『大切な人』。
生まれてからずっとお父さんと二人で暮らしてきたわたしにはすごく大きな環境の変化で、最初は戸惑ってばかりだった。
もともと内気でおとなしい性格だったから、常にお父さんにくっついていた。
だけどすごく仲良くしてくれるお姉ちゃんや、優しいばあちゃん、そして面白いじいちゃんはいつだってわたしのことを気にかけてくれた。
「そうかそうか。穂花ちゃんは桜が好きなのか。」
特にじいちゃんは、いつだってわたしのそばにいてくれた。
「どうして桜が好きなんだい?」
「…お父さんが好きだから。」
「ほうほう。そうかい。」
「わたしのお母さんが好きだった花なんだって。」