HEROに花束を(完)

物心がついた時には、お母さんは写真たての中にいる存在になっていた。


写真の中のお母さんはとても綺麗で、まだ幼いわたしを優しく抱っこしてくれていた。


わたしが写真を見ていると、お父さんはよくお母さんのお話をしてくれたものだった。


『お母さんはすごく綺麗な人で、まるで美しい桜の花みたいだったよ。』

『桜の花?』

『そうだよ。お母さんの名前はサクラっていうんだよ。桜にも花言葉があってな、優美な女性って意味があるんだ。お母さんはその花言葉にぴったりなとても美しくて優しい人だった。』

『じゃあ穂花も桜好き!』

『そうか。穂花にもお母さんみたいに心優しい人になってほしいな。』

『うん!』

『お父さんは桜の花が好きな子が大好きだよ。』


わたしはお父さんに大好きって言われるのが好きで、いつの間にか桜が好きになっていた。

自分もいつかお母さんみたいになってお父さんに喜んでもらいたいって思ったから。
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