HEROに花束を(完)
駄菓子屋さんで暮らし始めた最初の日々は、本当に黄金のような毎日だった。
わたしが夢みてた『お母さん』という人がいて、親戚とつながりを持っていなかったお父さんが、『おじいちゃん』と『おばあちゃん』と仲良く話していて、とても優しい『お姉ちゃん』ができた。
だけどそんな日々は長くは続かなかった。
「お父さん!」
玄関に向かうお父さんにわたしは声をかけた。
「一緒にお散歩に行こうよ!」
二人で暮らしていた頃は、よくお父さんとお散歩に行った。
春はお花見にって、夏は海沿いを歩いて、秋は紅葉を見に行って、冬は雪だるまを作った。
わたしはお父さんが世界で一番好きな人だった。
お父さんの笑顔が世界で一番大好きだった。