HEROに花束を(完)
そういったとき、じいちゃんの瞳が悲しそうに揺れたのにわたしは気づかなかった。
雪は溶け始め、草は芽吹き出した。
お父さんのいない家に帰りたくなくなって、仲良しのお友達と遊ぶことも多くなった。
美菜ちゃんって呼んでた女の子は、わたしの話を全部聞いてくれたし、いつだってそばにいてくれた。
それでも、わたしはやっぱり寂しかったんだ。
わたしはよく窓を覗いてお父さんの帰りを待っていた。
「穂花、もう遅いから寝なさい。」
お義母さんにそう言われても、わたしはこっそりと夜中に布団を抜け出して玄関で待っていた。
「お父さんまだかなあ。」
わたしはよく桜の絵を描きながら待っていた。
わたしを産んでくれたお母さんとお父さんが桜の花々の中で並んでいる絵も描いた。今の新しい家族も付け足して描いたのを覚えている。
「いっぱいいっぱい。みんながいっぱい。」