HEROに花束を(完)
その夜、お父さんはふらついた足取りで帰ってきた。
「お父さん!おかえり!」
わたしはガバッと腹ばいになっていた体を起こしてお父さんに抱きついた。
お父さんは大きくてまるでクマみたい。
大きく息を吸えば、漂ってくるのはじいちゃんがよく飲んでいるお酒の匂い。
顔を上げると、お父さんはわたしに笑いかけてくれなかった。
「お父さん!」
そう呼べば、いきなり腕をお父さんの体から剥がされた。
わたしは驚いて固まった。
「サクラっ…。」
お父さんは苦しそうにわたしの顔を見つめている。
どうしてだかわからないけど、
涙が出そうになった。