HEROに花束を(完)
桜の花々が舞い始める季節になった。
ある日、お父さんが大きな鞄を持って家に帰ってきた。
朝早くてまだ誰も起きていなかった。
そんな中、お父さんはわたしの部屋にそっと入ってくると、小さく手招きをした。
「お散歩に行こうか。」
わたしはあまりにも嬉しくて、パジャマのまま駆け出すと、お父さんの手を強く握って二人で家を出た。
久しぶりに握るお父さんの手はやっぱり温かかった。
桜のベールをくぐるとお父さんはわたしのことを見て小さく微笑んだ。
「穂花は、本当に天国のお母さんに似てるんだな。」
なぜだかお父さんは悲しそうだった。
わたしはその理由がわからなくて、ぎゅっとお父さんに抱きついた。
「お父さん、わたし、お母さんみたいなる。」
そしたら、大好きって言ってくれるんだよね。
「お父さん、穂花のこと大好き?」
するとお父さんは、なぜだか泣きそうな顔になってわたしを抱き上げた。