HEROに花束を(完)
お父さんの首に腕を回して、強くお父さんにしがみついた。
離したらまたどこかに行ってしまうような気がして、怖かった。
「お父さんは穂花のこと世界で一番大好き?」
お父さんにもう一度聞いた。
お父さんはわたしの背中をさすりながら、何も言わない。
「お父さんはっ、穂花のことっ…大好きっ?」
答えてくれないのが怖くて、泣きそうになってもう一度聞いてみる。
お父さんはそんなわたしをゆっくりと離すと、歪んだ表情でわたしの顔を見つめた。
「穂花は、綺麗だな。」
お父さんは掠れた声でそういった。
「穂花は、幸せになるんだよ。」
桜の花びらがお父さんの髪の上に舞い落ちた。
「お父さんも幸せになる?」
そう尋ねたら、お父さんの瞳から涙が一粒零れ落ちた。
「うん。幸せになるよ。」