HEROに花束を(完)
菜の花畑の中にポツポツとおじさんたちが働いている。
小さい頃はよくばあちゃんに連れられて菜の花をつんできたっけ。
でも今では昔の気さくな菜の花畑のおじちゃんが管理をやめてしまって、その息子が継いでいるから、菜の花を摘むとお金を取られるようになってしまった。
どうしてみんなお金とかにこだわるんだろう。
分け隔てなく優しくすればいいのに。
でも…誰にでも優しくて、広い心を持つような完璧な人間なんて、いないか。
今まで完璧な人に出会ったことなんてないもんな…。
わたしは小さく自虐気味に笑うと、クロの背中を優しく撫でる。
「公園寄ろっか、クロ。」
クロはもう老犬だ。ゆっくりとしか歩けない。
夕日を浴びながら近くの公園に足を踏み入れる。
近所の子供達がきゃあきゃあと遊んでいるなか、
わたしはベンチに腰をおろして伸びをする。
ふあ〜、疲れたな。
クロはこの公園の茂みでいつも用をたす。
だけど老犬であるせいかいつもなかなかその場所が決まらず、わたしはベンチで待つはめになるのだ。
あくびを噛み殺しながら神経質な老犬をぼんやりと見つめる。
そんな時、見覚えのあるシルエットが滑り台の後ろから現れてわたしは突然のことに息を飲む。