HEROに花束を(完)

わたしは小さく口元を緩めた。


変な人。


まだ入学してから三日目なのに、みんなのキラキラと輝く視線を集めている。


わたしは鉛筆を紙に運ぶと、


その男の子の上に花びらが舞い落ちるように描いた。

なんだか二人は似てるな。

そんなことを思って一人でふふっと笑った。



休み時間になると、わたしはなんとなく席の近い人たちと机を合わせてお弁当を食べる。

まだみんなのことがわからないし、

友達ができるか、不安と諦めの気持ちが募るばかりだった。


「うちさあ、彼が好きなんだよねえ!」

「わかるわかる!」


周りの人たちの話題は流行りの芸能人へと移っている。

だけどテレビを見なくて、さらに芸能人に興味がないわたしはついていけるはずもなくて…

ただ黙って微笑むことしかできないんだ。


「美奈子誰が好き?」

「えー、わたしはあの金曜ドラマの人が好き!!」

「ええー?嘘〜ださいじゃん。」

「沙羅の趣味もわかなんないわ。」
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