HEROに花束を(完)
するとその姿が現れた途端に子供達がわいわいその人の周りに集まっていった。
クタクタの灰色のパーカーに、
よれよれのこれまた灰色のズボン。
その上、夕日を背中に浴びて黒く浮かび上がってるものだから、
その人の寝癖がはっきりとよく見える。
さっきからあくびばかりしていて、そんな彼に寄ってたかる子供達。
「悠。」
紛れもなくあの変わり者、結城悠だ。
どうしてこんなところにいるのだろうか。
わたしは眉をひそめて、わたしの『敷地』への侵入者を観察する。
それにしても、なんであの人に子供達がそんなに群がっているんだろう。
わたしはそろりそろりと腰をあげる。
ちらっと見て、見つかる前にこの場を去るのが一番だ。
学校で変なこと言われても困るし。
せっかく無難に過ごしているのだから、騒ぎはなるべく起こしたくない。