HEROに花束を(完)

しばらく様子をうかがっていると、その理由が明らかになってきた。


「おけ、おけ、落ち着け子供達よ。」


『子供達よ』って、なにさそれ。

また変な喋り方をしているものだ。

自分の中のマイブームなのかな。


「よし、よし、一人づつ、一人づつ。」


「悠ちゃん、あーちゃん犬飼ったの!」


「うおー!本当に?」


なんか普通に会話が成立しているところがまた面白い。


「ああ、そういえばな、犬といえば、俺も買ってんだけどな…。」


そして悠はなんと子供達とちゃんと向き合って会話をしているのだ。


それも面倒くさそうにとかそういうのではなくて、


本当に話したかった、っていうような表情で、だ。


大人になるにつれ、子供達のうまいあしらい方がわかるようになってくる。

そうなんだあーって相槌を言いながら適当に笑顔を振りまいたりしておけば、体力を使わずに済んだり…

だけど彼はそのような要素が全くと言っていいほど見えない。


あともっとびっくりするのが、彼はちゃんと一対一で話すのだ。


一人ひとりの目線に合わせてかがんで、ちゃんと目を見て。


やっぱりすごいよ、悠は。

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