HEROに花束を(完)
わたしも少しおどおどしながら後に続いた。
ガラッと引き戸を開けると、涼しい夏の夜の匂いが鼻を掠めた。
「暗くなる前にかえんねーと。」
悠はそう言って髪をくしゃっと触る。
そして振り返った悠と視線が交差する。
お互い何も話さない。
りん、りん、りん。
鈴虫が静かに歌っている。
どこからかカエルの鳴き声が聞こえてくる。
夕焼けで赤く染められた悠の顔は、いつになくカッコよく見えた。