HEROに花束を(完)
「俺…、」
ブー、ブー、ブー。
ちょうど良いのか悪いのか、悠の携帯が無機質な音でなりだした。
「ごめん。」
そう言って悠は携帯を耳に当てる。
「もしもし、お母さん?…うん…うん、ごめん…わかった。今帰るから…。いや、大丈夫。おっけ。じゃあな。」
悠は携帯を切ると顔を上げる。
「ごめんね、遅くなっちゃったよね。お家の人心配してるでしょ?」
「いや、こっちこそ、なんか、ごめん。」
中途半端な間が空く。
「その、俺、帰るわ。」
なんだかさっきの緊張した雰囲気もなくなり、返事を返すような空気でもなくなった。
「うん。」
そして悠はポケットから懐中電灯を取り出す。
「まだ持ってるの?あはは。」
わたしが笑えば、
「そ、ポケットから出すの忘れてた。」
「いつから洗ってないのよそのズボン。」
「いや、結構やべえな。」
そう言って笑いあう。