HEROに花束を(完)
「じゃあ今日も探検隊になります!」
そう言って面白おかしくピシッと兵隊さんのポーズをすれば、わたしも手を額に当ててそのポーズを返す。
「じゃあな穂花!」
「うん、じゃあね悠!」
そして悠は懐中電灯を照らしながら歩いて行った。
なんだか拍子抜けしたけど、ホッとした自分もいた。
もしあのまま電話が鳴らなかったら、どうなってたんだろう。
悠は今、何を思ってるんだろう。
悠の口から、なんていう言葉が出てきていたんだろう。
わたしは空を仰いだ。
紅色から群青色に変わっているその空は、まるで失恋する誰かの心中のような気がした。
それは夏の夜の、些細な思い出だった。