HEROに花束を(完)

甘い塩水


ージー、ミン、ミン、ジー


朝から騒がしく蝉が鳴いている。



窓から差し込む光だけで部屋の温度は上がる為、


家中全部カーテンをかけていてお化け屋敷状態だ。



ばあちゃんの提案で電気を節約をしている我が家は、


夏になると家が真っ暗になる。



8月に突入しないとクーラーをつけないという、


勝手なお母さんとばあちゃんの決まりだ。



「こらっ、そんなだらだらしないの。」



ソファで寝転がってテレビのチャンネルを変えている私を見て、



掃除機をかけているお母さんが呆れた声を出す。



「だって何もやる気が出ないんだもん。」



これこそまさに夏バテ。


食欲も出なければ体力もない。


額に浮かんだ汗をぬぐいながら、わたしははあっとため息をつく。
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