HEROに花束を(完)

わたしは立ち上がると、悠に背を向けて駆け出した。


「穂花っ!」


悠と美菜ちゃんの声が聞こえても、無視した。


「ふーん。」


蓮さんが小さく笑ったのを聞いて、また無性に腹が立ってがむしゃらに走った。


悠なんか大っ嫌い!


砂が足にまとわりついて引きずろうとするけれど、わたしは泣きながら走り続ける。


長い影が後ろから伸びてくる。


自分の影なのか誰かの影なのか、そんなことはどうでもいい。


ただ、この場を去りたかった。


まだ告白の返事も聞けていないわたしは、きっと恋愛対象にさえ入っていない。


それが悔しい。


返事さえもしてくれていないのに。わたしが悠のこと好きって知ってるのに。


なのに知らんぷりして美菜ちゃんと話してる悠が大っ嫌い!


あまりに泣いたせいで前が見えていなくて、背後にだれかがいるのかも気づいていなかった。


そんな時、腕を強く引っ張られてわたしはバランスを崩した。


あっ!


と思った時には、温かい日向の香りに包まれていた。
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