HEROに花束を(完)

悠はそっと風で煽られる髪をわたしの耳にかけた。


どきっ。


心臓がうるさい。


「綺麗。」


そうつぶやく悠に頰が赤く染まるのがわかった。


美菜ちゃんのこととか蓮さんのこととか、全てが泡のように消え、悠しか見えない。


「蓮に、何された?」


今度は掠れた声で聞く悠。


「何もされてないよ。」


わたしも小さく答える。


「嘘。」


悠がそう言ってわたしの首筋に触れるから、体がビクッと反応した。


「蓮にもそうやって反応したの?」

「えっ…っ?」

「だってほら、キスマーク。」


そう言ってさす首筋を見れば、確かに赤いマークが付いていた。


暴れすぎて気がつかなかったのかもしれない。
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