HEROに花束を(完)

観覧車を降りて二人で歩きながらわたしは聞く。



「あのさ…千秋ちゃんって悠と同じ中学だったよね?」


「あーそうそう。それがどうかした?」


「いや、あのさ…サッカー、してたんだよね、悠?」


「ああー…まあね。」



千秋ちゃんは微妙な表情を浮かべる。


その表情が、それがあまりいいことではないことを語っている。


ああ…やっぱり、悠はわたしにいろんなことを隠している。


そう思って、どんどんと気分が沈む。


「その…どうして辞めちゃったのかな…って。」


「理由は明白じゃないんだけどねえ。」


「えっ、そうなの?」


蓮さんが知らないだけじゃなかったんだ…。

悠は…本当に全部一人で抱え込んでいるんだね…


「いやなんかね、悠すごいかわいい他校の子と付き合ってて、」


黒い雲がゴウゴウと胸を覆う。

悠は…わたしじゃない女の子を好きだった。

悠の好きな人を見る目をわたしはまだ知らない。

きっとその子と手をつないだり、ぎゅうしちゃったり…っ

キスも、しちゃったのかなっ…


こんなにも胸が苦しい。


自分がどんどんと欲張りになっている。

悠にとってのファーストキスは…っわたしじゃなかったんだ…


わたしの初めては、全て君なのに。


ずるいよ…っ

「でもなんか別れちゃったみたいでさ。そのショックかなー。」


ショック…か。


そんなにも好きだったんだ…

泣きたいよ。
ひどいよ。

ってことは、悠は、振られたってことだよね。

まだ…っ好きかもってことだよねっ?!

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