HEROに花束を(完)
いつの間にかわたしは取り残されていた。
みんなもうお互いの名前はもちろん、相手のことを呼び捨てにまでしている。
そんな中わたしとしたら…
話題はどんどんと進んでいき、みんなわたしの存在までも忘れている。
だから今さら喋ったってもう遅い。
わたしはいつだってこうなんだ。
生まれてから、ずうっと。
ずっと、ずっと、変わらないんだ。
わたしはそっとお弁当の蓋を閉じると、教室を後にした。
きっと誰も気づいていない。
それでいいんだ。
わたしは廊下に出ると、窓辺に両腕を乗せて、大きな桜の木々を見下ろした。
この学校に入ったのも、本当は桜の木がたくさん生えていたからなんだ。
「綺麗…。」
お姉ちゃんはがっかりしちゃうかもしれないけど、
一生懸命受験したのも、全部、
この桜のためだったんだ。