HEROに花束を(完)
「もっとっ、進行すればっ」
「やめてっ!!」
「っ…病状はっ、個人差があるのっ。すごくゆっくり進行する病気でっ、悠は中一の時にっ…その病気を知ったのっ。だけどっ、ずっと前から進行していたみたいっ…。」
『悠と美菜はね、幼馴染で、すごく仲が良かった。中一の春に付き合って、秋にはもう別れてた。短かったよ。』
『なんで別れたのかはわからない。二人はすごいお似合いだったのにな。』
『ただ、その同じ時期に、悠がサッカーを辞めたってことだけは知ってるよ。』
いやだっいやだっ!
知りたくないっ!
やめてっ!
悠は、あんなにもっ…笑顔だったっ。
「っぅ… 夜盲病に続いて、今度はっ、視野が狭くなってっ…くる。周りからぼやけていって、っ、悠の見える範囲が中心に向かって狭くなってしまうっ…」
「っ聞きたくないっ!!!!」
「視野狭窄になるとっ、中心部しか見えなからっ…人とかっ…車が来てもわかんなくなるしっ、」
「ちがうっ!嘘っ!!!嘘っ!!!」
金切り声をあげる。
人混みがわたし達の間を流れてゆく。
「っ足下が見えなくてつまずいたりっしてっ、悠はっ、危険にさらされるのっ!!」
「嫌だあっ…っ。」
喉がヒリヒリして、頭が真っ白で、でも、ただ、悠の笑顔だけが見える。
「それでっ…。」
「もういい!!!やめてよっ…。」