HEROに花束を(完)
「もういいなんて言わないでっ!」
美菜ちゃんが叫んだ。
「悠はもういいなんて言えないっ!!
これを全部受け止めるしかないのっ!!!
これを全部知って、それでも笑ってるのっ!!!!
嫌だなんて悠には通用しないんだからっ…っ!!!」
悠は、自分がどうなるかを知って、それでも笑顔を絶やさなかった。
それだけじゃなくて、自分が一番辛いはずなのに、わたしを助けてくれたっ。
どれだけお人好しなのよっ…っ。
バカっ…っ、バカバカバカ!!!
なんで言ってくれなかったのっ…なんで勝手にいなくなっちゃうのっ…!
「っ、この病気はっ、進行性がすごくゆっくりだからっ…きっと悠は数十年は失明しないっ、でもっ!!」
美菜ちゃんは泣き叫んだ。
「悠はっ、進行が早くから始まっていたしっ…っ。これは遺伝子の病気でっ、治せないっ…からっ、悠はすごく高い確率でっ失明してしまうっ。早ければ、30歳からっ、もう悠は何も見えない生活を送らないといけないっ!!!」
「悠っ…っ。」
「それってっ、長く思えてっ、あっという間だよっ…?もう、あと、10年もしたらっ…っ、」
「美菜ちゃんっ…悠の事、守ってあげてっ?」
そういえば、美菜ちゃんはもっと泣き出す。
「わたしにはっ、無理なのっ。悠を裏切ったっ…荷が重すぎるっ。」
美菜ちゃんは声を張り上げる。
「悠はっ、今っ、いろんなものを見て心に刻んでおかないと、いけないのっ!悠の人生のっ、大事なときなの…っ!そんな大切な時間をっ、悠と過ごせる自信はないっ…。」
「っ、美菜ちゃん…っ。」
「わたしっ、この病気を知った時っ、悠から逃げたのっ。だからっ…」
美菜ちゃんは震えるように声を絞り出した。