HEROに花束を(完)
休み時間、いつものように千秋と他の友達と机をくっつけてお弁当を開く。
開け放たれた窓から見える小さな丘は、いつの日か初めて彼が話しかけてくれた思い出の場所。
紙飛行機がこつんと当たって振り向けば、おかしそうに笑う彼がいたんだ。
とても昔の出来事に思えるそれは、今となってはじんわりと温かい、それでいて切ない記憶となってしまった。
「今日のお弁当は?」
千秋がわたしのお弁当箱を覗き込んでくる。
「ばあちゃんの梅干しおにぎりとお団子。」
そういえばみんながいいなあ、って声を上げる。
ばあちゃんはわたしの自慢の祖母だ。
ばあちゃんがばあちゃんで良かったって今では思える。
ーそれも全部、君のおかげだよ?
君が気づかせてくれたんだ。あの人には置いて行かれたけれど、その代わりにとても大切な家族ができたんだって。
絶交した親友にあって、家族の大切さを学んだんだよ。
母子家庭だった彼女は、今ではきっとあの人たちと幸せに暮らしている。
ーわたしは、今、幸せだよ。
そう美菜ちゃんに伝えたい。