HEROに花束を(完)

「っ…本当にっ、ごめんなっ。」



父の振り絞られた声が静かに冬の風に運ばれてゆく。



「ごめんなさいっ、ごめんなさいっ…。」



父は壊れたみたいにそればかりを繰り返す。



「穂花がっ…あまりにも美奈子に似ていてっ…」



父は涙をぼろぼろとこぼしながら、ポケットから一枚の振り写真を取り出した。



「俺にはっ…耐えられなかったっ…っ穂花を見るたびに辛くなって…っ、生きていけないと思った…っ、ごめんなさいっ…。」



父の大きな手に守られた一枚の写真に写っていたのは、優しく笑う母の姿だった。



桜の木々を見上げて笑う母は、それは清々しく、生き生きとしていて、とても綺麗だった。

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