HEROに花束を(完)
君のいない教室
雪が溶け始め、グジョグジョとしたアスファルトの上を顔をしかめながら歩く。
まだピリピリと寒い空気を、太陽が黄金色の光で照らしている。
「おはよう!」
「おはよう千秋。」
二人で並んで土と混ざった雪の上を歩く。
「今日は部活?」
「そうだけど、今日は写真を提出するだけだから、すぐ終わる。」
「やったー!じゃあ二人でカフェに寄って帰ろうね!」
千秋が嬉しそうに飛び跳ねるから、泥色の雪が飛び散る。
「ああ〜制服についたー!」
「わあっごめんごめんー!」
そう言って逃げるように走って行く千秋を追う。
息を切らしながら教室に飛び込めば、生徒たちが呆れて笑う。
「千秋〜、穂花をいじめるなー。」
「はあ?いじめてないしー。」
くだらない会話を繰り広げていると授業開始のチャイムが鳴る。
いつものような1日が始まる。
数学のノートを広げると、今日の日付を書く。
2月12日。
あと一ヶ月で今年は幕を閉じる。
長いようであっという間だった一年。
色々なことがあった。
色々なことがありすぎた。