HEROに花束を(完)

ゆっくりと振り向けば、窓際の一番奥の席が埃をかぶってぽつんと空いている。


わたしは小さく首を振ってまた授業に集中する。


あれからもう二ヶ月が経つのかと思うと、日々の流れる速さに自分が置いていかれそうで怖くなる。


わたしだけあの時のまま、動けず、凍ってしまったみたいだ。なのに世界は止まってはくれなくて、わたしだけを置いて当たり前のように毎日が繰り出されてゆく。


バカみたいにうるさい悠がいない教室はどこか静かでつまらない。


授業中にいきなり立ち上がる生徒はいないし、ドッと笑いに巻き込まれることも減った。


彼がいなくなってから、改めて悠の偉大さを実感したのは言うまでもない。きっとそれは誰しもが思っていること。だけど、それでも、当たり前のようにみんなは笑って、まるで彼がもともといなかったみたいに生きている。


それに焦りを感じてしまうのは、わたしがおかしいからだろうか。


最初こそ動揺していた一年三組。だけど今となっては、まるでこれが普通かのような日々。

悠を好きだと言った掃除のあの子だって、一緒に盛り上がっていたサッカー部の男子達だって、あれだけ悠を叱っていた先生だって、みんな…みんなっ…





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