HEROに花束を(完)
「なんで穂花はこんなに真剣なの?」
歩ちゃんは言った。
「なんか、すごい必死っていうか…なんていうか。」
わたしはなんと言えばいいのかわからず言葉を探す。
「そもそも、撮影部に入りたいっておもったきっかけとか、聞いてないし…。」
歩ちゃんは口ごもる。
「だって、今の穂花変だもんん。」
「えっ?」
「前みたいにふわって笑わない。」
「ふ、ふわっ?」
「自然な笑顔っていうか…」
「でもいつも笑ってるよ?」
「いや、そうなんだけど…前はその、なんていうか、本当に笑いたいときに笑っていたっていうか…今は適当な笑いっていうか…嘘っていうか…ああーだから!」
歩ちゃんは顔を上げる。
「穂花が穂花じゃないみたい。」
「え…。」
「前の穂花は無表情なことが多かったけど、だからこそ、たまに見せる笑顔が嬉しくて、すごく好きだった。でも今は…違うんだよ。」
歩ちゃんは長い黒髪を耳にかけて困ったように笑った。
「穂花…なにか、あった?」
わたしはうつむく。
「相談、いつでも乗るよ?」
相談…ありすぎて…わかんないよ…。
「大丈夫、ごめんね。」
だから、そう答えるしかないんだ。