HEROに花束を(完)
校門を出て千秋とカフェによる。
悠が引っ越してから、千秋は彼のことを聞いてくることはなかった。
きっと彼女なりに配慮してくれているのだと思う。
「美味しかったー!」
「本当にね!」
「じゃあまた明日ね穂花ー。」
「じゃあねー!」
千秋と別れて駅へ向かう。
前までだったらよく悠と一緒に通っていた改札。
ーピッ
一人で鳴らす音はどこか寂しい。
時間を見ればあと1分で発車。
きっと間に合わないから速度を落とす。
もし悠がいたら、きっと走ったんだろうな。
そう思ったら切なくなって、がむしゃらに足を動かした。
全然楽しくもなんともないのに走った。
エスカレーターをタンタンタンと駆け上がり、ギリギリに電車に飛び込む。
悠がいないと、何も楽しくない。