HEROに花束を(完)
「そっか。」
悠はそう言うと、よし、と立ち上がった。
「授業始まるからそろそろ教室もどろっか。」
相変わらず背中には草がたくさんついていて、やっぱりどこか抜けている悠。
「うん。」
歩き始めて、わたしはお弁当をおいてきたことに気づいた。
「悠、先行ってて。」
そして元の丘にかけもどる。
先を歩く悠に追いつこうとした時、
「おい結城どこいってたんだよー?」
「そうだよ!みんなお前のこと探してたんだぞー。」
「ごめん、ごめん。」
「最近なーんかあやしーんだよな。」
「女子もみんな寂しがってんぞー。」
たくさんの人たちに囲まれている悠を見て、足が竦んだ。
わたしがみんなから悠を奪って独り占めしているんだ。
みんなも悠が大好きなのに。
「ほら、行くぞ悠!」
「ちょっと待って。」
そう言って悠が振り返ろうとしたから、わたしは思わず桜の木の後ろに身を隠した。
「あれ、おかしいな。」
「なになに?彼女?」
どきっ…
「ちげーよ。ん、行くぞ。」
わたし、悠の迷惑だよね、きっと。