HEROに花束を(完)
昨日アイロンをかけたばかりのパリッとした制服を着て、背筋を伸ばして、わたしは桜の木々の下を堂々と歩く。
もう怖くなんかない。
一人で、しゃんと背筋を伸ばして生きていけるんだ。
桜の木々に願いを乗せることもない。
わたしは、悠のおかげで変われたんだ。
これで17年目の春。
わたしはもう、大丈夫だよ。
新しい教室。
初めましての生徒たち。
どこかまだよそよそしい雰囲気。
桜の花びらが窓から舞飛んでくる。
みんなの笑顔を優しく撫でる。
その時、脳裏にビリビリっと電流が走った。
『そんな中で、俺が友達を作る理由は、その人と分かち合いたいって思うからなんだ。』
いつの日か、わたしが悠を突き放した日、悠はそういった。
『その人といれば、楽しいだろうなって思うから、友達になろうって思うんだ。
一緒に笑顔になれる人がいれば、それはもう友達なんじゃねえのかな。
心から笑いあえるって、いいことだと思う。』
その時、わたしは心の中で、何かが動き出すのを感じたんだ。