HEROに花束を(完)

そっと木の後ろから顔を出すと、もうそこに悠の姿はなかった。


「はあ…。」

何隠れちゃってんの、わたし。

っ…でも、怖かった。


みんながわたしが悠といるのを見て、どんな反応をするのか。

目に見えてわかるその反応を、知りたくなかった。


きっとびっくりするだろうな。

ぼっちのわたしを悠が慰めに来ているなんて知ったら。


悠はきっと、一人ぼっちの人を放っておけないんだ。

優しすぎるから、悠は。


前までは、こんなことで悩むことなんてなかった。

周りに誰もいないのがもう当たり前になっていたから、何を言われても、たいして傷つくこともなかった。


だけど、今、そばにいる人ができてしまったから…

もっと、もっと、色々と考えるようになってしまった。


『友達』のことを気遣ったり、心配になったり、前までは知らなかったこの気持ち。


教室までの階段を駆け上がりながらわたしは寂しく笑った。


なんかもうわかんないや。


自分がどんどん変わっていくようで怖い。

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