HEROに花束を(完)
バス停につくと、美菜ちゃんはわたしを見上げた。
「これ、住所。」
美菜ちゃんは紙切れを一つ差し出した。
「ありがとう。」
小さな、でも穏やかな沈黙が生まれる。
「美菜ちゃん。」
「うん。」
「わたしの友達でいてくれてありがとう。」
そういえば、美菜ちゃんが泣きそうなほど嬉しそうな笑みをこぼした。
「穂花こそ、ありがとう。」
しばしお互いを見つめ合う。
まるでこれが最後の別れみたいに思われるその時間は、じんわりと温かかった。
プシューっ。
バスが着く。
「行ってくるね。」
「うん。」
すると、美菜ちゃんは不安そうな表情を見せた。
「ねえ、穂花?」
「うん?」
「穂花は、本当に悠のことが好きなんだよね?」
まるで確かめるように聞かれるその言葉たち。
いつの間にか気づかれていたことに驚くこともなく、
「うん、好きだよ。」
と、わたしは答えた。
そると、美菜ちゃんは少し悲しそうな、でも優しい笑みを浮かべて、
「わかった。じゃあ、よろしくね。」
と言った。