HEROに花束を(完)


わたしはポケットから、バスに行く途中に集めた、桜の花びらがたくさん詰まった瓶を取り出した。


悠が何をしていて、何を思っていて、どこにいるのかはわからないけれど、この花びらを見て、わたしを思い出してくれたらいいな。




そんな、少し欲張りなわたしの願望、許してね…?




うとうととし始めて、わたしははっと顔を上げる。


住所を慌てて確認して、ぎりぎりのところでバスから転がり下りる。


きっと二時間は乗っていたと思う。


眠い瞳をこすりながら降りた場所を見渡す。



「どこだろう…。」


住宅街らしい場所は見当たらない。

どっちかというと高級マンションが立ち並ぶエリアだ。


「え…こんなところに…。」


悠の家には一度も行ったことがない。

もしかしてすごいお坊ちゃんだったのかな。
< 446 / 537 >

この作品をシェア

pagetop