HEROに花束を(完)
わたしはポケットから、バスに行く途中に集めた、桜の花びらがたくさん詰まった瓶を取り出した。
悠が何をしていて、何を思っていて、どこにいるのかはわからないけれど、この花びらを見て、わたしを思い出してくれたらいいな。
そんな、少し欲張りなわたしの願望、許してね…?
うとうととし始めて、わたしははっと顔を上げる。
住所を慌てて確認して、ぎりぎりのところでバスから転がり下りる。
きっと二時間は乗っていたと思う。
眠い瞳をこすりながら降りた場所を見渡す。
「どこだろう…。」
住宅街らしい場所は見当たらない。
どっちかというと高級マンションが立ち並ぶエリアだ。
「え…こんなところに…。」
悠の家には一度も行ったことがない。
もしかしてすごいお坊ちゃんだったのかな。