HEROに花束を(完)
足を踏み入れれば、つーんと消毒の臭いが鼻を突く。
暖房の効いた広い待合室では、点滴を引いた人や怪我をした人
たちが座っている。
悠は…違うもんね…?
だって…あんなに元気だったもん…ね…
「面会ですか?」
挙動不振なわたしに、そばにいた受付の人が優しく聞いてくる。
「は…はい。」
よく見ると、紙切れのしたに、503、と番号が書いてあった。
「503号室…です…。」
泣きたい自分を抑えてそう言う。
「では、こちらが面会の方の札です。面会時間は四時までとなっています。個室へ入る際アルコール消毒をして…」
受付の人の指示に従い、面会カードのようなものを首から紐をぶら下げると、教えてもらった通りにエレベーターに乗る。
怪我でもしたのかな…足を折ったとか…
全てが悪い方向へと向かう。
「で、でも、病気の親戚の方がいるからってことかもしれないじゃん…。」
なんて理不尽な考えを無理矢理自分に言い聞かせる。
「必ずしとも悠が怪我したってわけではないでしょ…。」