HEROに花束を(完)
知らないうちに涙が頬を伝っていた。
こんな悠…見たことない…。
こんなに弱々しい悠なんて、初めてだよ…っ
握りしめる桜の小瓶が震える。
「おえっ…っ、ゲホッ…。」
悠が眉間にしわを寄せて吐いているのを、わたしは何もできずに見つめていた。
「っ…はぁっ…はぁっ…っ。」
きっと今、悠はすごく辛くて痛くてたまらないと思う。
なのにわたしは、ただ、突っ立つことしかできない。
悔しい…っ
悔しくて、悔しくて、涙が滲んではこぼれ落ちる。
一番怖くて一番辛いはずの悠に恐怖を感じている自分が憎くて、わたしは壁に背をつけて泣き崩れる。
悠の声が聞こえないように耳を塞いで、息を押し殺して泣く。
悠…っ、どうして何も言ってくれなかったのっ…
この二ヶ月間っ、悠はどんな思いをして生活してきたのっ…
一人で病室で苦しんでいる悠を想像して、自分に嫌気がさした。
何の病気なのかはわからない。
それでも、悠がすごく辛いのだけは伝わってきた。