HEROに花束を(完)

そっと病室を覗き込む。


夕日を浴びるカーネーション。


まるで失恋したバラのように真っ赤な花びら。


窓から差し込む夕焼けがつくる、病室のベッドの黒い影。


外の空気に触れて優しく揺れる桜の木々。


どこかで看護婦師さん達がバタバタと病室に駆け込む音。


ピッ、ピッ、ピッ…


病院の機械が奏でる寂しい音楽。


えんじ色の光が包み込むのは、静かに眠る悠の横顔だった。
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