HEROに花束を(完)

糸に引かれるように、わたしは悠の元へと手繰り寄せられていた。


少し白くなった悠の顔。


長いまつげが縁取る悠の閉じた瞳。


柔らかそうな小枝色の髪が少しだけ、減ったような気がする。


薄い唇は口角をあげていない。


まるで悠じゃないみたいだけれど、やっぱりその横顔が愛おしくて、悠を抱きしめたくなって、わたしはいつの間にか手を伸ばしていた。


悠の頬に触れてみたかった。


いつのものように紅潮していないその白いほっぺたは、どこか、幼なげだった。


柔らかくて温かい悠の頰をそっと指先で撫でる。


いつの間にか流れた涙がぽたっとシーツに落ちた。


また、いつもみたいに笑ってよ。


冗談だって、これもまた、失明するって言ったのと同じように嘘だって、言ってよ…


ねえ、いつ戻ってくるの?


早く…っ帰ってきてよ。


< 456 / 537 >

この作品をシェア

pagetop