HEROに花束を(完)
糸に引かれるように、わたしは悠の元へと手繰り寄せられていた。
少し白くなった悠の顔。
長いまつげが縁取る悠の閉じた瞳。
柔らかそうな小枝色の髪が少しだけ、減ったような気がする。
薄い唇は口角をあげていない。
まるで悠じゃないみたいだけれど、やっぱりその横顔が愛おしくて、悠を抱きしめたくなって、わたしはいつの間にか手を伸ばしていた。
悠の頬に触れてみたかった。
いつのものように紅潮していないその白いほっぺたは、どこか、幼なげだった。
柔らかくて温かい悠の頰をそっと指先で撫でる。
いつの間にか流れた涙がぽたっとシーツに落ちた。
また、いつもみたいに笑ってよ。
冗談だって、これもまた、失明するって言ったのと同じように嘘だって、言ってよ…
ねえ、いつ戻ってくるの?
早く…っ帰ってきてよ。